2018年の天体撮影を振り返って

2018年は、夏以降、天候に恵まれなかったため、あまり天体撮影はできませんでしたが、大きく撮影環境が変わった年でした。その活動をちょっと振り返ってみたいと思います。ところどころリンクを貼らせてていただきます。ブログの目次のような内容になってしまいましたが、興味がございましたらリンク先も見ていただければと思います。
テーマとしては大きく二つに分けると、「新しい機材の導入」と「光害への対応」になります。また、惑星拡大撮影やASIairでの撮影など、初めての試みも多かったように思います。

●新しい機材の導入

  1. 冷却CCDから冷却CMOSへ
    まず最初の大きな機材変更は、この冷却CCDから冷却CMOSに入れ替えたことでした。ここから色々とはじまりました。
    長年使用してきたAtik383L+*1 *2とAtik314L+*2を手放して、ZWOのASI1600MM ProとASI178MC-Coolを導入しました。赤い缶詰のようなZWOの冷却CMOSは、コストパフォーマンスが高く使用されている方も多いようで、ネットなどでもよく見かけるようになりました。このカメラの導入によって、かなり撮影方法なども変わりました。
    ASI1600MM Proの方は、カラーフィルターと組み合わせてのRGB合成*3やナローバンドフィルターでの撮影*4、ASI178MC-Coolの方は、ワンショットのカラーカメラとして主にSharpCapのLive Stack撮影*4 *5や惑星の動画撮影*6 *7を行いました。Gainの設定など複雑なところも多いですが、冷却CCDよりデジカメによる撮影に近い感覚でした。
  2. シュミットカセグレンC5鏡筒と周辺像の改良
    火星の接近に伴い導入しました。もともとは、惑星の拡大撮影*1 *2の目的で購入しましたが、DSOの撮影もしてみたくなってしまいました。結果として、ガイドカメラの同架や周辺像の改良などの沼にはまっていくことになりました*3。周辺像の改良は、ネットで先人達の知恵を借りてのコマコレクターとクローズアップレンズによる像質改善でしたが、最初は思うような結果が得られませんでした*4。最終的には、撮像センサーまでの距離調整にたどり着いたことによってそれなりの結果を得ることができました*5 *6。春の系外銀河などの撮影でまた試してみたいと考えました。
  3. ZWO ASIAIR *1 *2
    このASIAIRの登場は、撮影環境を大きく変えることになりました。スマホを使用してあれだけの処理を行えることには本当に驚きました。特にPlate Solve機能は秀逸で、アライメントや導入、構図調整に大きな威力を発揮してくれました。これまで今ひとつ使い切れていなかった自動導入改造AP赤道儀がよみがえったように思います。軽量で手軽な撮影方法として、今後の活躍が期待できます。
  4. 電源の小型・軽量化 *1 *2
    電源も見直しました。これまでは、12V電源といえば鉛シールバッテリーで、リチウムイオン電池のモバイルバッテリーは5Vで使用することがほとんどでした。しかしながら、リチウムイオン電池の高容量化・小型化などで12V電源も余裕で取れるようになってきました。撮影機材の小型・軽量化とも合わせてフットワークの改善に寄与してくれたと感じます。また、ポータブルの太陽光パネルでの充電も試みてみました。こちらはまだ十分に実用レベルとはいいがたいですが、夏場の日差しが強い時期には、キャンプなどで活躍してくれそうです。

●光害への対応

  1. 冷却CMOSカメラによるLive Stack撮影 *1 *2
    冷却CMOSカメラを導入したことによって、このLive Stack撮影が可能となりました。数十秒~1分程度の短い露出で大量に撮影してリアルタイムにコンポジットするため、赤道儀の追尾精度がそれほど要求されなくなりました。それだけでなく、光害の影響を軽減することにもなりました。ただ、あらかじめダークファイルを準備しておいて、ダーク補正もリアルタイムで行わないと非常にノイジーな画像となってしまいます。まだ試せていませんが、フラット補正も同時に行ったほうが良いようです。こちらも今後の活躍が期待できますが、課題も多いです。
  2. STC Astro Duoナローバンドフィルター *1 *2
    これは、天リフさんの記事をツイッターで拝見して導入を決断しました。私の居住地もなかなかの光害地なので、長年、光害カブリには悩まされてきました。これまでも、IDAS LPS-P2やAstronomik CLSなどを使用してきましたが、画像処理の際に苦労していました。ナローバンドフィルターでの撮影も行っていましたが、手間や時間がかかっていました。この強力なフィルターによって一眼デジカメでの撮影の幅が広がりました。明るく色収差の少ない光学系での撮影が望ましいことや、カラーバランス調整・フラット補正などに工夫が必要ですが、遠征せずに地元でも撮影できることは大きいと感じています。

最後に拙いですが、冷却CMOSカメラの導入当初にLive Stack撮影の試験のために撮影した春の系外銀河(M51 ,M81 ,M82 ,M101)です。 まだダークファイルなどが準備できていなかったので背景が荒れていたり、露光が十分でなかったりします。しかし、これまで撮影を半ばあきらめていた対象が、大量の短時間露光の積み重ねでここまで写ったことに大きな可能性を感じたものでした。

こうしてみてみると、2018年はいろいろな機材を導入して、かなり撮影環境が変わりました。年々、居住地の光害がひどくなってきたことや遠征に出かける時間が限られてきたことなどで、天体撮影のモチベーションは低下していましたが、これらの機材のおかげで復活してきました。2018年は、試作やレビュー的な撮影・記事が多くなりましたが、今後はこの経験を生かして撮影や作品そのものに力を入れていけたらと思いました。